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アトリエ訪問

  • 2015年7月7日
  • 読了時間: 3分

4月にマレーシアから友達が来ていたので、奥多摩の鍾乳洞に行こうと電車に乗った。

初めて降りた青梅駅には、それはそれはレトロな雰囲気の待合い室があり、その中に入るといかにも絵描きといった風貌の外国人のおじいさんが背中を丸めて座っていた。

友達が、古い待合室だね!と英語で話すと、おじいさんは、ベレー帽の下からゆっくりと覗き込むような目で私達の方に視線を向けた。マレーシアから来た友達は中国系の顔立ちで、一見日本人に見えるため、英語を話したことに驚いたのだろう。おじいさんは優しく「君はどこから来たのかね。」と訪ねてきた。それが、ドイツの画家、Daniel Moreauさんとの出会いだった。

 別れ際にもらった名刺の住所を頼りに、6月にモローさんのアトリエに保育士の友達と一緒に訪れた。手作りだというこじんまりとしたアトリエは、柔らかい春の光のような優しいピンク色をした壁をしていて、そこにはたくさんの絵が置いてあった。シュタイナー教育を推奨するモローさんは、様々なことを話してくれた。「子ども達の絵を見ると、スタンプを押したみたいに決まった形でしか絵を描かない。あれは本当の木じゃないし、花じゃない。太陽でもない。ああいう絵は私は好きじゃないんだ。」そう言って、自分で紙に描いた、緑の三角形を二つ並べた図形のような木に大きく×を付けた。これは、私の敵なんだ。と。

「もっと、色を信じて、ただ手を動かしていくような、そんな絵が広まって欲しい。」モローさんは、抽象画を得意とするが、その色遣いはとても優しい。また、一度も下書きをせず、動物や花は写真を見て描いた事がないというが、モローさんに描かれる花や動物たちは活き活きとしている。「外に出たら、観察するんだ。川の中で魚が泳いでいたら、観察して、どんな形をして、どんな動きをしているのか見るんだ。」

とても、印象深い言葉ばかりだった。

 そして、7月。日本で芸術活動を続けることに限界を感じたモローさんは、もうすぐドイツへ帰ってしまうというので、今度は元幼稚園教諭で今度海外の大学院へ行く友達と、フィリピンから日本に来て英語の教員をしている友達と一緒に再度アトリエを訪れた。

「芸術家が暮らして行くには大変だ。お客さんも、支援者、ギャラリー、アトリエ、それに日本でやって行くには通訳ができるマネージャーが必要になる。私はドイツに帰るよ。」また、モローさんは笑いながらこう続けた。「良い友達がいたからドイツでも私は暮らしていける予定だが、その友達がいなければ橋の下で寝泊まりすることになっていたかもしれない。」と。そうして、アトリエに置いてある絵を見渡しながら、死んだ後はこの絵達はどうなるんだろう、とつぶやいた。今の私はただただ描いているだけで、そんな事、考えたこともなかった。私は何歳まで絵を描いているんだろう?

 教育について、感性について、そしてartistという生き方について、たくさん考えさせられた。いつも素敵なお話をしてくれた、モローさんに心から感謝したい。

ドイツに帰ってもお元気で。

Daniel Moreau http://www.danielmoreau.info/english/


 
 
 

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